第1回 標準教程研修会 研修内容まとめ |
研修部 辻本 忠和 理事 |
開催場所:(生駒市)北コミュニティセンターISTA はばたき |
〈解説編〉
立禅
中国では「站樁功」(たんとうこう)と言う。 首が前に垂れないように頭頂を天から吊られたように意識する。あやつり人形のように。それによって「虚領頂勁」ができる。 この時に「泥丸宮」を意識する。 手は虎口(フーコウ:親指と人さし指の間)をあけて体側にそわせる。虎口を内側に向けるのは楊名時太極拳の特徴。 立禅の時、手の位置はいろんなやり方がある。中国で代表的なやり方は「三円式」。 そして気功をする人の中心軸は、両腕の真ん中で、太極拳では頭の「百会」が中心軸になる。 百会中心の場合は、両手を少し胸に寄せて重心がかかとになる。足の裏は柔らかくゆったりと床を踏み、緊 張させない。 目は見開かず半眼にして一点を注視せず、眺視する。だからしっかり見ない、ボーっと見る。 立禅の留意点:(太極拳も同じで)視覚、聴覚を制限する。(余計な情報を入れない、しっかり見ない、外からの音に惑わされないということ。) 体性感覚を利用する。 そして、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)のうち、人間は80%は視覚に頼っている。目で見たもので判断しようとする。 それを避けるためにボーっと見ながら立禅したほうが良い。目で見たものを信じすぎる。目で見たものは全て錯覚だと思えばいい。 |
八段錦
中国に古来から伝わる民間健康療法で、気功法の一つ。宋の時代からあり千年以上の歴史がある。 いろんなやり方があって誰がいつ作ったか定説はないが、湖南省長沙市の馬王堆漢墓(ばおうたいかんぼ)出土の導引図に描かれている。 八段錦の名が最初に見られるのは南宋の時代。北宋の時代には既に広まっていて、座式と立式があった。立式八段錦は簡単に練習できるため、広まった。南宋の時代に可決化され、明・清の時代に大きく発展し清末にかなり完全な動作套路の絵図ができ、この時期から伝統八段錦の動作が固定された。 現在は八段錦は中国の伝統的な健身法として広く一般的に普及している。 しかし残っていいものでもそんなに広まっていないものもある。例えば「五禽戯」(ごきんぎ)気功法の一つ。 中国の華佗という医者が曹操に投獄され、牢屋の中で、手錠のまま編み出したとされる。 「三円式」の形もその時にできたという話もある。華佗の「五禽戯」も中国では広まった。 発展の仕方が違って、気功は医療用のものであって人と戦うためのものではない。 では、「気功」という言葉はいつできたかというと、1957年 中国の北戴河(ほくたいが)で気功療養院の院長をしていた劉貴珍という人が「気功」と名付けた。 内気功(体内で気を巡らす)のうち動功(動きのある気功)で「甩手」、静功(動きのない気功)で立禅をやっていた。
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〈第一段錦〉双手托天理三焦 上焦は心・肺、中焦は脾・胃、下焦は肝・腎・小腸・大腸・膀胱‥などに分布するという考え。
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〈第二段錦〉左右開弓似射雕 同時に手の太陰肺経などの経絡の気を調整する。それと下肢の筋力増強に有効。 |
楊名時太極拳
楊名時太極拳は、簡化24式太極拳から引用された。伝統太極拳にはいろんな流派があり、その中の伝統楊式太極拳でも場所によって人によって教え方が 違う。 簡化24式太極拳は、楊式太極拳をベースにしてラジオ体操のように誰がやっても一定の効果が得られ、動作や幅の大きさが分かりやすく作られた。 もとの位置に戻す。 上げる時に吸って、下げる時に吐く。 |
1、起勢(動き出しの形)動作要素:両臂前挙、屈膝按掌 そして手を上げる時は、肩甲骨を下げて肩関節で上腕骨を上げる。手を下げる時は、逆に肩甲骨が上がる。重心は下がらない。 なぜか?それはテコの原理だから。しかし、こんな面倒なことはできないので、手を上げて、下がる時に膝をゆるめて重心を下げる…でいい。 両腕をゆっくり前から上に持ち上げて、手首が肩の高さに来たら、手首と肘、股関節、膝をゆるめゆっくり沈み中腰になる。 (上肢と下肢が)一緒に沈む。 手と足と重心が協調して動く。協調して動くということは、一緒に始まらない、バラバラに動く。しかし、終わりは一緒に終わって整う。 終わりとは一つ一つの動作の「定式」。起勢、野馬分鬃、白鶴亮翅… などの形が「定式」。でも定式では止まらないこと。 悪い例の一つとして、手が先に動いて止まってから足が動く…とか、足が先に動いて止まってから手が動く…など。 元々、陳式ではこの上げる手は、「掤」(ポン)。「掤」は膨らむという意味と手法の形としての「掤」と2つの意味がある。 陳式太極拳は馮志強(ひょうしきょう)先生に習った。
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2、野馬分鬃 どちらでも良い。 左野馬分鬃の時、右手は「座腕」「座腕」がアンカーポイントになって左手が使える。 「座腕」と「塌腕」(ターワン)は同じ。使う向きが違う。 力を込めてはいけないが、萎えすぎるのも良くない。背中から腕全体に少しだけ外側に向かって張りを持つバネのような意識が欲しい。
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3、白鶴亮翅 動作要素:跟步抱球(右足寄せてボールを抱く)、後座転体(後ろへ座り体を右へ開く)、虚歩分手(虚歩で手を分け開く) (手が先に動くのではなく、目が先導して手が動くのが正解。)そして手をジッと見るのではなく遠くを見る。
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実技編
立禅
開立歩(カイリブ)になる時、閉足からすぐ左足を開ける人は 若い人。 正しい老人は右足の内転筋に重心を乗せないと左足が開けない。(”注” 正しい老人とは、一般的な老人のこと) まず、重心を右足に乗せて(膝をゆるめる)少し右を見ながら左足を開く。それから顔を真ん中に戻して、重心も真ん中。そして、立禅。 任脈(アゴから下、会陰までの正中線を通る経絡)で下がる(吐く)。そして、また会陰から督脈で上がる(吸う)。を繰り返す。 |
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簡単に言うと、背中で吸って、お腹で吐く。重心は吸う時は、かかと側へ、吐く時は、くるぶし(内くるぶしと外くるぶしの間の足底)に下す。 身体はそれに合わせて少し揺れていい。 |
甩手
「後ろ歩きの甩手」目から動く、片足になって真後ろを見る。極端に言うと目が動いて後ろ足の内転筋に乗って、身体が回る。骨盤から回さないように。骨盤から回すと左右の肩も一緒に動いてしまい、背骨がねじれない。 骨盤はなるべく回さずに上体は後ろまで回りたい。骨盤は左右には動くが、回転は10度くらい。前歩きの甩手なら、頸椎は45度、胸椎は35度、骨盤は10度回って(全部で)90度(真横)動ける。特に胸椎上方のねじれ。 「前歩きの甩手」も目から動く、左右を見る。 片足になって沈む。目が向いてないほうの足が上がる。目が向いたほうの足が上がるのが「後ろ歩きの甩手」。 重心が後ろへ移動する時は、背中からバックする。重心が前に行く「前歩きの甩手」は身体から、会陰から前に行く。 アゴは前にあるので、バランスをとるために後ろの足を少しスライドさせる。向いたほうのアゴと後ろの足がバランスするのを感じてほしい。 両足で頑張らない、片足になる。そして、両手は同時ではない。どちらかが先に動く。腰に巻く手が先、上の手が後から動く。 真横から誰かが呼んだと思って振り向く。「後ろ歩きの甩手」は真後ろまで振り向く。そして、肩甲骨を動かす。 膝は内側に入れないこと。(特に後ろ歩きの甩手) |
八段錦
〈第一段錦〉双手托天理三焦 しかし、合わせた手は百会の上に来たくないから、上を見て百会を後ろに向ける。それから正面を見て 両手を横から下ろす。 キツい人は、合わせた手は額の前くらいでも良い。あまりキツいと筋肉が硬まるから。 |
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〈第二段錦〉左右開弓似射雕 ストレッチ効果とバランス効果があるからずっと昔から続いている。 そして、最新型の八段錦を作ったのは、上海の荘元明先生、それが練功十八法。内容は全部八段錦。 |
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※ 虎口を開くやり方 2種:人差し指と親指を開いて、残りの3本の指を第2関節から曲げるやり方。と 4指を揃えて伸ばし、親指を開くやり方。 練功十八法のように4指を伸ばして虎口を大きく開くと、長掌筋(手の手根から肘の内側までの屈筋)の腱がゆるんで伸びる。 外側の伸筋が張って、エキセントリック収縮で腕が伸びる。だから、いっぱい伸ばしたほうがいい。 握る拳は、強く握ると長掌筋が緊張してスジが出るから、出ないように軽く握る。 長掌筋は、他の屈筋で代用できるので、よく野球選手などが、肘の手術の移植する時に使われる。(トミー・ジョン手術) 太極拳でも長掌筋は使わない。 馬歩は収臀にして、膝はなるべくつま先を越えないようにする。 |
太極拳
〈野馬分鬃〉 前の手は、卓球のバックハンド(外旋)で打つ。 重心が下がってるから後ろの足で地面を蹴ると筋力がいる(緊張する)。 そうではなくて(収臀して)会陰から前に進む。そして、退がる時も前の足で(地面を)蹴ってはいけない。 後ろの膝がゆるんで、つま先方向にバックする。そして、前の足つま先30度開く、前の膝がゆるんで前進する。 |
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それから、前の足を踏んで後ろの足を持ち上げないで、目と前の手と身体が回ることによって、後ろの足を寄せる(抱球)。 抱球動作から寄せた足を前に出す時、ドスンと着地させない。 抱球で横を向いた瞬間、後ろの肩と前に出す足がバランスして(軸足の膝のゆるみで)前に出る。
「進在会陰、退在夾脊」郭福厚先生の言葉で「進むは会陰に在り、退がるは夾脊に在り」 背中から退がれ…と言うと、背中が固まって後ろへ雑に退がってしまうが、夾脊(背骨の両側)は、左右だから横の動きも入る(螺旋)。 これらの骨を全部動かしたいが、骨は単独では動けない。動かすのは、筋肉や腱…など。約600個の筋肉が206個の骨を動かしている。 それを全部使いたい。 |
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〈白鶴亮翅~搂膝拗步〉 そして正面見て白鶴亮翅。次に左見て右90度見て、(左足前に出して)左足つま先が降りた瞬間、前を見る。 攻撃する時は、先に前を見る。それから右手が動く。 搂膝拗步:90度見る時はゆっくり見て、手が動いて、前の右つま先が着地したら、すぐ前を見て、前を見てから左手 |
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を前に出す。 攻撃と防御で目を向く速さが違う。バックする時は、夾脊からバックする。 |
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〈手揮琵琶〉 そして、右90度見ながら右足かかと着地。同時に左手、左足少し寄せて、正面見て、左足かかとで前へ、左手を前に出す。 |
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〈倒捲肱〉 |
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大きくやってもいいが、大事なことは、退がりながらは打てない、ということに気づくこと。 「梅花歩」は後ろへ弧を描くように退がって、前の足の修正はかかとを軸にして、つま先を動かす。 楊式太極拳のやり方。横幅が取れれば、どちらでもよい。 実際に手をじっと見るのではない。眼が先に動いて、遠くを見ながら身体の動きをコントロールするということ。 |
健康太極拳標準教程より抜粋 著者:楊 進・橋 逸郎 |